NFT(Non-Fungible Token)は、アートや音楽、ゲームアイテムなど、さまざまな分野で活用が広がっています。
一方で、「NFTを売ったら税金はどうなるのか」「クリエイターと購入者で扱いは違うのか」といった税務面の疑問を抱く人も少なくありません。
NFTに関する税金の難しさは、立場や取引内容によって課税の考え方が変わる点にあります。
自分で作品を販売するクリエイターと、NFTを売買するコレクターでは、所得の性質や課税タイミングが異なります。
さらに、二次流通で発生するロイヤリティ収入についても、仮想通貨とは異なる視点で整理する必要があります。
また、NFTの取引は多くの場合、仮想通貨(暗号資産)を介して行われるため、NFTそのものの取引と仮想通貨の売却・使用が同時に発生している点も、誤解を生みやすいポイントです。
「NFTを売っただけ」「ETHで買っただけ」という感覚だけで判断すると、課税関係を見落としてしまう可能性があります。
この記事では、NFT取引に関わる税金について、立場別・取引別に整理しながら解説します。
具体的には、NFTに関する課税の全体像を確認したうえで、クリエイター側(作品販売)、コレクター側(売買・転売)、ロイヤリティ収入の扱い、そして帳簿や記録の付け方までを順番に見ていきます。
目的は、節税テクニックを紹介することではなく「自分のNFT取引は、どの税金の話なのか」を正しく整理できるようになることです。
NFTに初めて関わる人でも、全体像を把握しやすい構成を目指します。
第1章:NFTに関する課税の全体像
NFTの税金を理解するためには、個別の取引を見る前に、まず「NFT取引では何に対して課税されるのか」という全体像を押さえることが重要です。NFTはデジタルデータそのものというより、ブロックチェーン上で管理される権利情報であり、その売買や利用の過程で複数の課税ポイントが生まれます。
この章では、NFTに関する課税の基本構造を整理します。
NFT取引では「NFT」と「仮想通貨」を分けて考える
NFTの税金で最も重要な考え方は、NFTそのものの取引と決済に使われる仮想通貨の取引を分けて考えることです。
多くのNFTは、ETHなどの仮想通貨で売買されます。この場合、「NFTを売った・買った」という行為と同時に、「仮想通貨を使った・受け取った」という行為も発生しています。
税務上は、この仮想通貨の使用や受領が課税判断の起点になるケースが多い点に注意が必要です。
課税の判断基準は「価値が確定したかどうか」
NFT取引においても、税務上の基本的な考え方は仮想通貨と同じで、価値が確定した瞬間に課税判断が行われます。
具体的には、NFTを販売して仮想通貨を受け取ったとき、NFTを転売して差益が出たとき、ロイヤリティとして仮想通貨を受領したときなどが、「価値が確定した」と判断されやすいタイミングです。
立場によって所得の性質が変わる
NFTの税金は、どの立場で取引しているかによって所得の性質が変わります。
例えば、作品を制作・販売するクリエイターの場合、NFT販売による収入は、事業所得や雑所得として扱われる可能性があります。一方で、NFTを購入して売却益を狙うコレクターの場合は、仮想通貨取引と同様に雑所得として整理されるケースが一般的です。
同じNFT取引でも、「創作活動の対価なのか」「資産の売買による利益なのか」という視点で整理することが重要になります。
NFT取引で発生しやすい課税タイミング
NFTに関する代表的な課税タイミングには、次のようなものがあります。
- NFTを販売して仮想通貨を受け取ったとき
- NFTを転売して差益が出たとき
- ロイヤリティとして仮想通貨を受領したとき
いずれも、「円に換算できる価値を取得した」と判断される点が共通しています。
NFT課税の全体構造を図解で整理
ここまでの考え方を、NFT取引における課税の全体構造として整理します。
NFT取引における課税の全体像
① 取引内容
- 作品販売
- 転売
- ロイヤリティ
② 立場の違い
- クリエイター
- コレクター
- 保有者
③ 課税判断
- 価値が確定
- 円換算が可能
- 所得として整理
ポイント
NFT課税は「取引内容」と「立場」を分けて考えることが重要です。
NFTに関する税金は、一つのルールで単純に判断できるものではありません。
次章では、まずクリエイター側(NFTを販売する側)に焦点を当て、作品販売時の税金の考え方を詳しく解説します。
第2章:クリエイター側(販売)の税金
NFTを制作・販売するクリエイターにとって、最も気になるのが「NFTを売ったときの収入は、どんな税金になるのか」という点です。
NFTはデジタルアートや音楽など創作活動と結びついているため、単なる資産売買とは異なる視点で整理する必要があります。
この章では、クリエイター側の立場に絞って、NFT販売時の税金の考え方を解説します。
NFT作品販売は「創作の対価」として考える
クリエイターが自ら制作したNFTを販売した場合、その収入は創作活動の対価として扱われます。税務上は、状況に応じて事業所得または雑所得に分類されるのが一般的です。
継続的・反復的にNFTを制作・販売しており、明確に事業として行っている場合は、事業所得に該当する可能性が高くなります。一方で、副業や趣味的に販売している場合は、雑所得として整理されるケースが多く見られます。
販売時は「NFT収入」と「仮想通貨使用」を分けて考える
NFT販売では、多くの場合、ETHなどの仮想通貨で代金を受け取ります。
このとき、税務上は次の2つの側面が同時に発生しています。
- NFT作品を販売したことによる収入
- 仮想通貨を取得したことによる評価
NFTの販売収入は、受け取った仮想通貨の時価(円換算)を基準に計上します。
この金額が、そのまま売上や収入金額になります。
制作コストや手数料は経費になる
クリエイター側にとって重要なのが、経費として認められる支出です。
NFT制作・販売に直接関係する支出は、条件を満たせば経費として差し引くことができます。
代表的なものには、次のような支出があります。
- 制作に使ったソフトウェアやツール代
- ガス代(NFTの発行・販売時の手数料)
- マーケットプレイスの手数料
これらを適切に記録しておくことで、
課税対象となる所得金額を正しく計算できます。
受け取った仮想通貨の「その後」にも注意
NFT販売で受け取った仮想通貨は、受け取った時点で収入として計上されますが、それで終わりではありません。
その後、その仮想通貨を売却したり、他のNFT購入に使ったりすると、仮想通貨の損益計算が別途必要になります。
NFT収入と仮想通貨取引は、時間差で二段階の課税関係が生じる点に注意が必要です。
クリエイター側の課税構造を図解で整理
ここまでの内容を、NFTクリエイター側の課税構造として整理します。
NFTクリエイター側の課税の流れ
① NFT販売
- 作品を出品
- 仮想通貨を受領
- 時価で収入計上
② 所得区分
- 事業所得
- 雑所得
- 立場で判断
③ 追加課税
- 仮想通貨売却
- 交換・使用
- 別途損益計算
ポイント
NFT販売と仮想通貨取引は、課税上は別の段階として整理します。
NFTを制作・販売するクリエイターは、「NFTの売上」と「仮想通貨の扱い」を分けて整理することで、税金の全体像を把握しやすくなります。次章では、NFTを購入・売却するコレクター側の税金について、同じように整理していきます。
第3章:コレクター側(売買)の税金
NFTを購入し、保有したり転売したりする立場の人は、一般にコレクターと呼ばれます。
クリエイターとは異なり、コレクター側のNFT取引は資産の売買として整理されるのが基本です。
この章では、NFTを「買う・売る」側に焦点を当て、税金の考え方を分かりやすく解説します。
NFT購入時点では原則として課税されない
NFTを購入しただけの段階では、原則として税金は発生しません。
NFTを保有しているだけでは、価値が確定したとは判断されないためです。
ただし、NFTの購入に仮想通貨を使用している場合、仮想通貨を使った時点で損益計算が必要になる点に注意が必要です。仮想通貨は「使った時点」で売却したものとみなされるため、取得価額との差額が課税対象になります。
NFTを転売して利益が出た場合
購入したNFTを後日売却し、購入時よりも高い価格で売れた場合、その差額が利益になります。
この利益は、原則として雑所得として扱われます。
NFTの売却益は、受け取った仮想通貨の時価(円換算)を基準に、取得価額との差額で計算します。NFTを円で売るケースは少ないですが、仮想通貨で受け取った場合でも、必ず円換算して整理する必要があります。
損失が出た場合の考え方
NFTを転売した結果、購入時よりも安い価格で売却した場合は、損失が発生します。
ただし、NFT売買による損失は、給与所得など他の所得と損益通算できない点に注意が必要です。損失が出ていても、税金が戻るわけではないという点は、初心者が誤解しやすいポイントです。
複数回売買している場合の注意点
NFTを頻繁に売買している場合、取引履歴の管理が非常に重要になります。どのNFTを、いつ、いくらで購入し、いくらで売却したのかを一つひとつ整理する必要があります。
特に、同じコレクションのNFTを複数枚売買している場合は、取得価額の管理を曖昧にすると、
利益計算にズレが生じやすくなります。
コレクター側の課税構造を図解で整理
コレクター側のNFT売買における課税の流れを整理します。
NFTコレクター側の課税の流れ
① 購入
- NFTを取得
- 保有のみ
- 原則非課税
② 売却
- 仮想通貨を受領
- 円換算
- 差額を算出
③ 課税判断
- 利益が出たか
- 雑所得として整理
- 損失は通算不可
ポイント
NFT売買では「購入時」と「売却時」で課税の考え方が異なります。
コレクター側のNFT取引では、「NFTの売買」と「仮想通貨の使用・受領」を切り分けて考えることが重要です。次章では、NFT取引ならではのロイヤリティ収入の税金について、詳しく解説します。
第4章:ロイヤリティ収入の扱い
NFT取引の中でも、特に誤解されやすいのがロイヤリティ収入の税金です。
ロイヤリティは、NFTが二次流通で転売されるたびに、制作者(クリエイター)へ自動的に支払われる仕組みですが、「いつ・どの時点で課税されるのか」が分かりにくいと感じる人も多いでしょう。この章では、NFTロイヤリティ収入の税務上の考え方を整理します。
ロイヤリティは「継続的な収入」として扱われる
NFTのロイヤリティは、一度作品を販売した後も、二次流通・三次流通のたびに発生する可能性があります。この性質から、税務上は継続的に発生する収入として扱われます。
クリエイターが継続的にNFT作品を制作・公開し、ロイヤリティ収入を得ている場合は、事業所得に該当する可能性があります。
一方で、単発的・副次的に発生している場合は、雑所得として整理されるケースが一般的です。
課税タイミングは「ロイヤリティを受け取った時点」
ロイヤリティ収入の課税タイミングは、実際に仮想通貨を受け取った時点です。
NFTが転売された事実だけでは課税されず、自分のウォレットにロイヤリティが反映された瞬間に、価値が確定したと判断されます。
このときの課税額は、受け取った仮想通貨の受領時点の時価(円換算)を基準に計算します。
ロイヤリティ受領後の仮想通貨にも注意
ロイヤリティとして受け取った仮想通貨は、受領時点で所得として計上されますが、それで税務処理が終わるわけではありません。
その後、その仮想通貨を売却したり、NFT購入などに使用した場合には、仮想通貨取引としての損益計算が別途必要になります。NFTロイヤリティは、「受領時」と「使用・売却時」の二段階で課税関係が生じる可能性がある点が重要です。
ロイヤリティ収入の課税構造を図解で整理
NFTロイヤリティ収入の流れを、課税の視点から整理します。
NFTロイヤリティ収入の課税フロー
① 二次流通
- NFTが転売
- 自動分配
- ロイヤリティ発生
② 受領
- 仮想通貨を受取
- ウォレット反映
- 時価確定
③ 課税処理
- 所得として計上
- 事業 or 雑所得
- 後続取引は別計算
ポイント
ロイヤリティは「受け取った瞬間」が課税判断の基準です。
NFTロイヤリティ収入は、自動で発生する分、申告漏れが起きやすい取引です。
次章では、こうしたNFT関連取引を正しく申告するために重要な帳簿・記録の付け方について解説します。
第5章:帳簿・記録の付け方
NFT取引の税金で、最終的に重要になるのが「どこまで記録を残しているか」という点です。
NFTや仮想通貨の取引はすべてオンライン上で行われるため、感覚的には「履歴が残っているから大丈夫」と思いがちですが、確定申告や税務上の説明では、自分で整理した帳簿・記録が非常に重要になります。
この章では、NFT取引における記録管理の基本を解説します。
NFT取引で最低限残すべき情報
NFTに関する税務処理では、取引の事実と金額を客観的に説明できる情報を残しておく必要があります。最低限、次のような項目を記録しておきましょう。
- 取引日時(ブロックチェーン上の日時)
- NFTの内容(作品名・トークンIDなど)
- 取引の種類(販売・購入・転売・ロイヤリティ)
- 受け取った、または支払った仮想通貨の数量
- 取引時点の円換算価格
これらがそろっていれば、後から損益計算や説明を行う際の土台になります。
クリエイターとコレクターで記録の視点は異なる
同じNFT取引でも、クリエイターとコレクターでは記録すべき視点が少し異なります。
クリエイターの場合は、売上だけでなく、制作コストやガス代など経費として計上できる支出を
漏れなく記録しておくことが重要です。
一方、コレクターの場合は、「いくらで取得し、いくらで売却したか」という取得価額と売却価額の対応を明確にしておくことが重要になります。
円換算の根拠を必ず残す
NFT取引は仮想通貨建てで行われるため、確定申告では必ず円換算が必要になります。
このとき、どの価格を使ったのかを説明できる状態にしておくことが重要です。
取引所のレート、マーケットプレイス表示価格、当日の相場データなど、円換算に使った根拠を
スクリーンショットやメモとして保存しておくと安心です。
帳簿・記録は「後から説明できるか」で判断する
帳簿や記録を付ける目的は、完璧な形式を作ることではありません。
最も重要なのは、税務署から質問されたときに説明できるかどうかです。
取引の背景や計算方法を含めて、第三者が見ても理解できる形で整理されていれば、形式は問いません。早めに記録を付ける習慣をつけることで、申告時の負担を大きく減らすことができます。
記録管理の考え方を図解で整理
NFT取引における帳簿・記録管理の考え方を、全体像として整理します。
NFT取引の記録・帳簿管理の基本
① 取引記録
- 日時・内容
- 数量・通貨
- 取引種別
② 円換算
- 相場を確認
- 根拠を保存
- 金額を確定
③ 説明可能性
- 計算過程を残す
- 一貫性を保つ
- 質問に対応
ポイント
帳簿は「自分用メモ」ではなく「説明資料」として考えます。
NFT取引の税金は、知識だけでなく「記録の質」で結果が大きく変わります。
次はいよいよ、記事全体をまとめる結論に進みます。
結論:NFTの税金は「立場・取引・記録」を分けて考えることが重要
NFTの税金は、仮想通貨以上に分かりにくいと感じられがちですが、本記事で整理してきたように、判断の軸を押さえれば過度に複雑なものではありません。
重要なのは、「誰が」「どんな取引をしたのか」を切り分けて考えることです。
まず、NFT取引では「NFTそのものの売買」と「仮想通貨の使用・受領」が同時に発生している点を理解する必要があります。
NFTを売った・買ったという行為だけでなく、その裏側で仮想通貨の損益計算が発生していないかを常に確認することが、課税関係を見誤らない第一歩です。
クリエイター側の場合、NFT販売やロイヤリティ収入は創作活動の対価として整理され、事業所得または雑所得として扱われます。一方、コレクター側の場合は、NFTの転売益が雑所得となり、損失は原則として他の所得と通算できません。
同じNFT取引でも、立場によって税務上の扱いが大きく異なる点が特徴です。
また、NFT取引ではロイヤリティのように自動で仮想通貨が入ってくるケースも多く、申告漏れが起きやすい傾向があります。「自動だから意識していなかった」という理由は通用しないため、受領時点で円換算し、所得として整理する必要があります。
これらすべてに共通するのが、帳簿・記録の重要性です。
完璧な形式である必要はありませんが、「いつ・何を・いくらで取引したのか」
「その金額をどう計算したのか」を第三者に説明できる状態にしておくことが、
最大のリスク回避策になります。
NFTの税金は、正しく理解して早めに整理しておけば、必要以上に恐れるものではありません。
本記事を参考に、自分のNFT取引を立場別・取引別に整理し、安心してNFT活動を続けられる状態を目指してください。

