「年利数%から二桁」という魅力的な利回りを見て、暗号資産のレンディングは本当に安全なのだろうかと感じた方は多いと思われます。預けて増やすという発想はわかりやすい一方で、CelsiusやBlockFiの破綻は、レンディングが単なる「利息付きの預金」ではなく、金融機関に近い信用・流動性ビジネスである現実を示しました。この記事では、両社の破綻から見える構造的な弱点を整理し、なぜ入出金停止が起きやすいのか、どこを確認すれば被害を抑えられるのかを丁寧に解説します。読み終える頃には、利回りの裏側にあるリスクを具体的に理解し、ご自身の資産を守る判断軸を持てるようになるはずです。
レンディングは「利回り商品」ではなく「信用ビジネス」だと捉える必要があります

CelsiusやBlockFiの破綻から得られる最も重要な教訓は、暗号資産レンディングが実質的に信用リスクと流動性リスクを引き受ける仕組みだという点です。利用者さんが見ているのは提示利率ですが、事業者側は預かった資産を運用・再貸出し、そこで得た収益から利息を支払う構造になりがちです。
そのため、市場が急変して担保価値が下がったり、融資先が返済不能になったり、利用者さんの引き出しが同時多発的に増えたりすると、事業者は短期資金のやり繰りが難しくなる可能性があります。結果として、入出金停止や資産凍結が起こり、利用者さんは「預けたのに引き出せない」という状態に直面することになります。
なぜCelsiusとBlockFiは行き詰まったのか

仕組みとして避けにくい「満期のズレ」があります
レンディングの中核的な弱点は、利用者さんが「いつでも引き出せる」と期待しやすい一方で、事業者が資産を中長期の運用や融資に回している場合、資金の回収タイミングが合わないことです。これがいわゆる満期ミスマッチと呼ばれる状態で、金融の世界では典型的な流動性リスクとして知られています。
平時は問題が表面化しにくいのですが、市場が不安定になり、利用者さんの引き出しが一斉に増えると、事業者は保有資産を売却して現金化する必要が出てきます。ただし、相場が下落している局面では、売却自体が損失確定につながりやすく、さらに売却を進めるほど市場価格に悪影響が及ぶ可能性もあります。つまり、「引き出しが増えるほど事業者の体力が削られる」構造になりやすいと考えられます。
再貸出(リハイポセーション)が連鎖を生みやすいです
CelsiusやBlockFiの文脈でしばしば論点になるのが、預かった暗号資産を別の相手に貸し出し、そこで得た利回りを原資にするビジネスモデルです。運用の透明性が十分でない場合、利用者さんから見えるのは「利率」と「残高」だけになり、どこに、どの条件で、どの程度集中して貸し出しているのかが見えにくくなります。
この状態では、融資先の破綻や市場急落が起きた際に損失が一気に顕在化しやすくなります。加えて、暗号資産市場では同じ担保が複数の取引で再利用される可能性が指摘されることがあり、ストレス局面では「どこまでが誰の資産なのか」が複雑化しやすいと言われています。こうした複雑さは、危機時の資産回収を難しくし、結果として利用者さんの資産返還が遅れる要因になり得ます。
担保の価値が下がると、健全性が急速に悪化します
暗号資産レンディングは、担保を取って融資するから安全だと説明されることがあります。ただし、担保が暗号資産である場合、価格変動が大きいため、市場下落局面では担保価値が急減しやすいです。すると、追加担保の要求や強制清算が増え、連鎖的な売り圧力が高まる可能性があります。
また、担保が「すぐ売れる資産」とは限らない点も重要です。流動性が低いトークンやロックアップがある資産、特定の市場に依存する資産は、価格が付かない、あるいは大幅なディスカウントでしか売れない局面があり得ます。つまり、帳簿上は担保があっても、危機時には現金化できず、資金繰りを支えられないことが起こり得ると考えられます。
規制・コンプライアンスが経営を左右します
中央集権型のレンディング事業は、国や地域によって金融商品・証券・預金類似商品としての規制対象になり得ます。実際にBlockFiは、米国の規制当局との関係で事業面の制約やコスト負担が発生したと報じられており、これが経営環境を厳しくした要素の一つと見られています。
規制が厳しくなると、利用者さんへの金利設計の見直し、募集の停止、対象地域の制限などが起こり得ます。ここで注意したいのは、規制強化それ自体が「悪い」というより、事業者にとっての可動域が狭まり、収益構造が変化して資金繰りが悪化する可能性がある点です。利用者さんとしては、利回りだけでなく、その利回りが「どのルールの上に成り立っているのか」も確認する必要があります。
「信頼の崩れ」が最終的に取り付け騒ぎを誘発します
暗号資産の世界では、SNSやニュースによる情報伝播が速く、不安が広がるスピードも速い傾向があります。事業者に関するネガティブ情報が出たとき、根拠が十分でない噂であっても、利用者さんは念のため引き出そうとします。その行動自体は合理的ですが、結果として引き出しが集中し、流動性リスクが現実化する可能性があります。
ここが難しい点で、危機時の引き出しは「正しい行動」である一方、その行動が事業者の資金繰りをさらに悪化させる側面もあります。つまり、レンディングは構造上、信頼が揺らいだ瞬間に脆くなるビジネスだと考えられます。
CelsiusとBlockFiの出来事から見えるポイント

Celsius:市場急落と運用損失が重なり、入出金停止に至ったとされています
Celsiusは高利回りを掲げ、預かった暗号資産を運用・再貸出するモデルで拡大しました。一方で、2022年の暗号資産市場の大きな下落局面では、担保価値の下落や、DeFi領域を含む運用面での損失が重なったとされています。結果として、利用者さんの引き出しが急増し、流動性が枯渇して入出金停止に至りました。
この事例が示すのは、「利回りの源泉がリスク資産の運用にある場合、相場環境の変化がそのまま返還能力に影響する」という点です。利用者さんが受け取る利息は、しばしば市場の順風が吹いている間だけ成立しやすく、逆風時には急速に難しくなる可能性があります。
BlockFi:融資先の信用不安と業界の連鎖が直撃したと見られています
BlockFiについては、特定の大手プレイヤーの信用不安や破綻が連鎖し、資金繰りに影響したと広く報じられています。融資先の債務不履行が損失として効き、その後の市場不安が引き出し増加につながり、最終的に顧客資産の凍結を伴う形になりました。
ここでの教訓は、レンディング事業者さんが複数の取引相手と結ぶ「信用の網」のどこかが切れると、利用者さんの資産にも影響が及ぶ可能性があることです。銀行の世界では分散や資本規制などで抑え込む考え方がありますが、暗号資産レンディングでは、同等の安全網が十分でない場合があると考えられます。
「2022年の破綻ラッシュ」は、特定企業の失敗ではなく構造問題として理解しやすいです
CelsiusとBlockFiは個別事情こそ異なりますが、共通して「高利回りを維持するためにリスクを取る必要がある」「危機時に資金が一斉に引き出される」「担保や取引相手の信用が同時に悪化する」という、レンディング構造に内在する弱点が見えます。つまり、特定の経営判断だけでなく、ビジネスモデルとしての脆弱性が露出した出来事として捉えると理解しやすいと思われます。
同じ失敗を避けるための現実的なチェックリスト

利回りの裏側にある「原資」を言語化して確認します
レンディングの利回りを見るときは、「その利息はどこから生まれるのか」をできるだけ具体的に理解することが重要です。事業者さんが公開する情報には限りがありますが、少なくとも運用方針や相手先の種類、担保の考え方、リスク管理の枠組みが説明されているかは確認できます。
特に、利回りが高いほどリスクが高い可能性があるという一般則は、暗号資産でも当てはまりやすいと考えられます。安全性の説明が「担保があるから大丈夫です」に終始している場合は、担保の種類、清算ルール、清算時の流動性まで掘り下げて読み取る必要があります。
- 利回りの源泉が、融資利息なのか、マーケットメイク等の取引収益なのか、DeFi運用なのかを確認します
- 運用先の分散や、特定相手先への集中がないかを確認します
- 担保の種類と、急落時の清算ルールが明文化されているかを確認します
「いつでも引き出せる」は契約上どう定義されているか確認します
多くの利用者さんにとって重要なのは、引き出し可能性です。ここは気持ちの問題ではなく、契約条件の問題になります。たとえば、利用規約上は事業者に入出金停止の裁量が認められていることが一般的で、緊急時の凍結は制度的に起こり得ます。
したがって、利率と同じくらい、引き出し条件、解約条件、ロック期間、遅延時の扱いを読み込む価値があります。特に、「停止されない前提」で生活資金を置かないという線引きは、リスク管理として現実的だと思われます。
- 即時引き出しと説明されていても、停止条項があるかを確認します
- ロック期間や償還までの所要日数、手数料の条件を確認します
- 入出金停止時の連絡方法や、開示方針が明確かを確認します
資産の名義と分別管理の考え方を確認します
中央集権型プラットフォームでは、預けた暗号資産の法的な位置づけが重要になります。利用者さん名義で分別管理されるのか、事業者側の管理口座に集約されるのか、破綻時にどのような扱いになり得るのかは、国や契約形態によって差が出る可能性があります。
ここは専門的になりやすい領域ですが、少なくとも「分別管理の有無」「監査や証明の仕組み」「破綻時の扱いに関する説明の有無」は確認できます。説明が薄い場合は、最悪のケースとして、返還まで長期化する可能性も想定しておくことが無難です。
分散は「銘柄分散」だけでなく「カストディ分散」が重要です
暗号資産のリスク分散というと、ビットコイン、イーサリアム、ステーブルコインといった銘柄の分散が注目されがちです。しかし、レンディングの文脈では、保管先やサービス提供者を分散する「カストディ分散」も同じくらい重要だと考えられます。
なぜなら、破綻や凍結は銘柄の値動きとは別に起こり得るからです。つまり、同じ銘柄を持っていても、保管場所が違えばリスクの性質が変わります。もちろん分散には管理負担も伴いますが、「一箇所に偏らない」という発想は有効です。
- 長期保有分は自己管理ウォレットを検討します
- レンディングに回す割合に上限を設けます
- 複数の事業者さんに分ける場合でも、相関リスク(同じ融資先に依存など)を意識します
レンディング以外の選択肢も含めて考えると判断しやすいです
自己管理と現物保有は「利回りがない代わりに凍結リスクを下げる」発想です
利回りは魅力的ですが、レンディングを使わないという選択肢にも意味があります。自己管理ウォレットで現物を保有する場合、利息は生まれませんが、少なくとも事業者都合の入出金停止とは無縁になりやすいです。
もちろん、自己管理には秘密鍵の管理やフィッシング対策など別種のリスクがあるため、一概に優れているとは言えません。ただ、レンディングのリスクが「相手先の信用」に依存するのに対して、自己管理は「自分の運用ミス」に依存しやすいという違いがあります。どちらが許容しやすいかは、利用者さんの経験や目的によって変わると思われます。
DeFiは透明性が高い場合もありますが、別のリスクが増える可能性があります
中央集権型レンディングの対比として、DeFiの貸し借りが挙げられることがあります。DeFiはオンチェーンで状態を確認できる場合があり、透明性が高いという評価もあります。一方で、スマートコントラクトの脆弱性、オラクルの問題、急変時の清算リスクなど、別の種類のリスクが増える可能性があります。
したがって、「CelsiusやBlockFiが危ないからDeFiが安全」と単純化するよりも、リスクの種類が変わると理解する方が現実的です。ご自身が理解できる範囲で、小さく試し、損失許容の範囲に収める設計が重要だと考えられます。
ステーブルコインも万能ではないと理解しておきます
利回り商品ではステーブルコインが使われることもありますが、ステーブルコインは価格の安定を目指す設計であって、発行体リスクや裏付け資産のリスクがゼロになるわけではありません。また、レンディングに預ける時点で「発行体リスク」に加えて「事業者リスク」も重なる可能性があります。
つまり、価格が安定していても、凍結や返還遅延のリスクが消えるわけではない点は押さえておきたいところです。
まとめ:Celsius・BlockFi破綻に学ぶレンディングの危険性
CelsiusとBlockFiの破綻は、暗号資産レンディングが「預けて増える便利なサービス」という側面だけでは説明できないことを示しました。レンディングは、預かった資産を運用・再貸出して利回りを生む以上、相手先の信用不安や市場急落、引き出し集中といったストレスに弱く、入出金停止や資産凍結が起こり得ます。
また、再貸出の連鎖や担保資産の流動性、規制・コンプライアンスの影響など、利用者さんから見えにくい要素が収益と安全性を左右します。したがって、提示利率だけで判断せず、利回りの原資、引き出し条件、分別管理、分散方針といった観点から総合的に検討することが重要です。
不安があるときほど、小さく始めて「続けられる設計」にすることが大切です
レンディングを検討している利用者さんの多くは、「増やしたい」という気持ちと「失いたくない」という気持ちの間で揺れやすいと思われます。そのとき、完璧な正解を探すより、まずはご自身の中でルールを決めて、続けられる設計にすることが現実的です。
たとえば、生活防衛資金はレンディングに入れない、預ける割合に上限を設ける、引き出し条件と停止条項を読んでから判断する、保管先を分散する、といった運用は行動に落とし込みやすいです。さらに、少額で試しながらサービスの挙動や開示姿勢を確認し、納得できる範囲でのみ利用する姿勢が、結果として大きな後悔を避ける助けになると考えられます。
この問題については様々な意見がありますが、専門家の解説では「利回りはリスクの対価であり、最悪のケースを想定したうえで参加すべき」と指摘されることが多いです。ご自身の目的と許容度に合う形で、無理のない一歩を選んでみてはいかがでしょうか。

